たしかなひかり

かすかな光

高校二年生 息ができない

キッチンでエレキを生音で弾いていたら兄に注意されてしまって、そりゃそうなんだけど、そりゃそうなんだけど
あたしはほんとにもうこうするしかなかったんだ これしか夜を越える方法がなかったの

 

泣きながら眠りについた、涙の跡じゃなくてシーツの跡がついていた

8時に起きれたけど、今日はラヴィットに令和ロマンが出るけれど、テレビを見る気になれなかった。タオルケットが柔らかかった。

兄の出勤時間が午後になった。わたしは午前中、発達障害の兄のでかい足音に怯えて泣きながらタオルケットにくるまっている。兄が家を出たのを確認して、着替えて丁寧にメイクをした。髪の毛を2つに結んでヘアバンドを巻いてイヤリングもつけた。どこにも行かなかった、どこにも行けなかった。

わたしは兄が好きだ。兄はとてもやさしい。ギターを注意されたのだって、キッチンの隣の部屋でお母さんが寝てるからだ。だけどね、わたし、泣いちゃうんだ

 

生まれてこなきゃよかったと思う。あたたかいスープを飲んでもやわらかい日差しが降り注いでもくるしさがすべてを支配してしまうのなら、わたしは死んでしまいたい。

 

小学生のとき、二階の窓のサッシに腰掛けてここから飛び降りたら死ねないかなと思った。中学一年生のとき、制服のままお風呂の残り湯に浸かって、このまま眠りについたら死ねないかなと思った。二年生のとき、靴の防水スプレーを吸い込んで死のうとした。三年生になって、ロープの結び方を覚えた。高校一年生、初めて自分の身体を傷つけた。心はとっくのとうにぼろぼろだった、わたしはずっと苦しかった。二年生のわたしは。

 

わたしにはこの世界がちょっと息苦しすぎたみたい。外からものすごい雨音がする。責め立てられてるみたいだ。どこへでも行けるようでどこにも行けなかった。夜勤を終えて帰ってきた兄が錠剤を飲む音がする。兄が、やさしいままで生きられたらいいと思う。そしてわたしは死んだらいいと思う。わたしは今日も眠れない。