さらして

今年度に入ってはじめて学校を休んだ。6回くらい学校からの不在着信が入っていた。

 

休むという選択肢があたしの中に組み込まれてしまっているんだろう、それを大人たちは怠けとか甘えっていうんだろうと、布団の中でお天気キャスターの声を聞きながらぼんやり思った。

履修登録変更、譲らなきゃよかったな。高認取って大学行くにしても、歴史総合の授業は受けといたほうがよかったよな。いまさらどうにもなんないことを、鈍く痛いのに妙に冴えてる頭で考えていた。18にもなって校外学習なんて行きたくないけど、なんとなく一緒にお弁当を食べてるあの子は、あたしが居なけりゃ誰とまわるんだろう。心配なんてしなくても、明るくて可愛いから誰かしら捕まえられると思うけど、当たり前だけど、なんかさ。

学校の子と話すときわたしはいつもちょっと頑張っている。みんな同じ?あたしは自己愛が強いぶん、誰かに笑われることが怖くて仕方ないよ。あたしねえ大好きなんだじぶんのこと。そんな可愛いあたしは、人に何かを教えられることが苦手。お兄ちゃんに将棋を教えてもらったときも数学を教えてもらったときもレコード屋さんでレコードを触らせてもらったときも、自分よりできる人に見られているという緊張でわかることもわからなくなって、簡単なこともできないじぶんがみじめで、あとから涙が滲んだ。体育なんかほんとに、苦手だ。水泳と持久走はできるけど、あとは本当にだめ。ゴム飛びならできたけど、走り高跳びになると高さ関係なく飛べなくなった。飛ばずに戻ってきてしまって、教師や友だちに飛びなよと言われて、へらへらと笑ってごまかして、やる気がないとみなされて評価は2だった。バドミントンは家のガレージで何度も練習して、百発百中サーブを入れられるようになっても、いざ体育の時間になって体育館に行けば、あたしの身体は動かなくてなんども空振った。可愛いあたしは本当に惨めだった。

あたしにできるのは勉強だけだった。あたしは正直あんまり頑張っていなくて、授業と課題をこなすだけで、田舎の公立中では一桁を取れていた。塾に通っていて、あたしより成績が悪いひとを内心馬鹿にしていた。だけどあたしは高校受験前に学校に行けなくなって、楽勝と思えたことすら何ひとつできずに年だけ取った。

高校三年生の年で高校一年生からやり直して、すべての授業でどう頑張っても抗えない眠気に襲われてうとうとしている。やっぱり高認とって大学に行きたい、けど、ひとりで努力することなんてできずに、易しすぎる英文に眠気を堪えられずに、いる。

ここまでじぶんが書いた文章を読み返してみても節々に変なプライドが感じられて気持ち悪かった。かなしいよあたしは、ひどく、ひどく惨めだ。きょうはパジャマで一日すごした。あたしの頬をねこが舐めた。ざらざらした舌が荒れた肌に当たっていたかった。しばらくその愛おしいひりひりは続いた。このねこの前でどんなあたしでもねこはねこだった。前髪を切ってもどれだけ肌が荒れてもやつれても、頭を撫でたら満足そうに目を閉じた。

GWに旅行をした。三日間家を空けて帰ってきたら、父と兄が、ねこがあたしのことを探してたよって教えてくれた。そうなの?とねこに聞いたら、ねこはそっぽを向いた。あたしはこのねこを世界一幸せにしてやりたいと思った。こいつの不安とか苦しみをぜーんぶ、ひとつずつ丁寧に取り除いてやりたいと思った。ねこが家にやってきたことはとても幸福。

あしたは三限からだ。ラヴィットを途中まで見れる。あたしが死んだらねこは居ないあたしを探すのかな、もしそうならあたしは死んではいけないような気がする。恥も傷もさらして学校にいく